投資歴18年、資産は100万円から7,900万円台まで増えました。ここだけ聞くと右肩上がりの成功談に聞こえるかもしれませんが、その道のりの中で「もう投資から離れたい」と、心の底から感じた瞬間が、はっきり3回あります。
今日はその3つの瞬間を並べて振り返ります。同じ「離れたくなる」でも、中身はまったく違う3種類でした。この違いに気づけたことが、18年間、投資という営みそのものからは一度も完全に降りずに続けてこられた理由のひとつだと思っています。
この記事の要点
- 18年で「投資から離れたい」と本気で感じた瞬間は3回あった
- 2009年=受け身の退場、2024年8月=踏みとどまった夜、2024年FX撤退=計算ずくの撤退
- 退場をゼロにするのではなく、退場の質を選べるようになることが18年の学び
瞬間①2009年:気づいたら市場から追い出されていた
1回目は2009年、投資を始めた翌年です。自動売買(トラリピ)で運用していた米ドル/円が強制ロスカットに遭い、元本20万円が8万円になりました。ショックだったのは金額そのものより、それに気づいたのが「口座を開いたら、もう終わっていた」というタイミングだったことです。自分が何かを判断する前に、結果だけが先に出ていました。相場を見ていなかった自分を責める気持ちと、こんなものかという脱力感が、同時にやってきたのを覚えています。
この経験のあと、私は1年半、投資から完全に離れました。相場もほとんど見ていません。これは「離れたい」という気持ちが強すぎて、選んだというより流された退場でした。振り返ると、この時期の私には「もう一度仕組みを学び直してから戻ってくる」という前向きな意図はほとんどなく、ただ市場から距離を置くしかない精神状態だったと思います。3つの中で、これが一番受け身の退場でした。

あの1年半、自分が何かを「決めた」感覚は一度もありませんでした。ただ流されて、市場から離れていただけです。
今振り返ると、この1年半には意味がなかったわけではありません。「なぜ負けたのか」を考える時間にはなりました。強制ロスカットの原因は、レンジを想定して組んだ自動売買が、想定を超えて一方向に動いた相場に巻き込まれたことでした。この構造を理解しないまま再開していたら、同じ失敗を繰り返していたと思います。1年半という長い休止期間は、傷を癒すための時間であると同時に、次に戻るための準備期間でもありました。
瞬間②2024年8月:売りたい衝動と、ひと晩向き合った
2回目は15年後、2024年8月5日です。日経平均が1日で4,451円下落する歴史的な暴落があり、私の資産は一晩で約850万円減りました。正直、めちゃくちゃ怖かったです。2009年のロスカットを思い出すような感覚もありました。
ただ、この夜は2009年とは決定的に違うことがありました。私には「売りたい」という衝動がはっきりあり、それを自覚しながら、あえて何もしないという選択を取ったことです。1回目が「気づいたら退場していた」受け身の経験だったのに対し、2回目は「退場したい気持ちと向き合いながら、踏みとどまった」経験でした。売らずに済んだのは、生活防衛資金を分けていて、その日の下落が生活に直結しなかったからです。この夜は退場しませんでしたが、退場したい気持ち自体は本物でした。
あの夜、私が繰り返し自分に問いかけていたのは「この850万円は、明日からの生活に必要なお金か」ということでした。答えは「いいえ」でした。生活防衛資金は別に確保してあり、この下落分がなくなっても、当面の生活は変わりません。売りたい気持ちと、売る必要があるかどうかは別の話だと、あの夜に自分の中ではっきり切り分けることができました。感情は本物でも、行動を決めるのは感情でなくていい。この区別ができたのは、2009年の受け身の退場を経験していたからこそだと思っています。
結果として、あの下落は月末ベースではほぼ横ばいまで戻り、翌9月には資産は約5,763万円まで回復しました。もしあの夜に売っていたら、この回復の恩恵は一切受けられなかったはずです。
瞬間③2024年:FXという分野そのものを手放した
3回目は、2回目とほぼ同じ2024年です。ただしこちらは株ではなくFXの話で、性質もまったく違います。15年続けてきたFXの世界戦略3ペア(豪ドル/NZドル・ユーロ/英ポンド・米ドル/カナダドル)を、私は自分の意思で全て決済し、60万円の損失を確定させました。FX人生で最大の損失であり、そしてFXからの正式な撤退でもあります。
この決断のきっかけは、恐怖や衝動ではありませんでした。FXの税制、つまり「決済益には毎年課税されるが、含み損はその年の利益と相殺されない」という構造に気づき、この仕組みの中で資金を投じ続けることが非効率だと判断したからです。1回目は受け身、2回目は衝動との対峙でしたが、3回目は感情ではなく計算に基づいた、一番冷静な退場でした。

感情に押されて決めた撤退と、数字を見て決めた撤退。同じ「やめる」でも、決めたあとの気持ちの軽さが全然違いました。
興味深いのは、この決断のタイミングです。もし2024年8月の暴落直後にFXの撤退を決めていたら、それは恐怖に押された判断だったかもしれません。実際には、株の暴落から数ヶ月の時間を置き、税制という別の切り口からじっくり検討したうえでの決断でした。同じ2024年でも、株の暴落とFXの撤退は、時期は近くても動機はまったく別物です。ひとつの年に「踏みとどまった退場」と「自分から選んだ退場」の両方があったというのは、書いていて自分でも面白い巡り合わせだと感じます。
3つを並べて見えること:退場にも種類がある
こうして並べてみると、「投資から離れたくなる」にはまったく違う3つの種類があることが分かります。
- 受け身の退場(2009年):自分の判断が及ばないところで市場から押し出される
- 踏みとどまる退場(2024年8月):離れたい衝動を自覚しながら、あえて動かない
- 能動的な退場(2024年FX):感情ではなく構造の分析にもとづいて、自分から手放す
18年前の私は、この3つの違いを区別できていませんでした。すべて「怖いから逃げる」という一つの感情として扱っていたと思います。でも今振り返ると、一番危険なのは1回目のタイプで、一番健全なのは3回目のタイプです。受け身の退場は、次に市場へ戻るタイミングも自分では選べません。実際、私は1年半も無為に過ごしました。一方、能動的な退場は、いつでも自分の意思で再開できる状態を保ったままの撤退です。
退場していないのに「退場したい」瞬間もある
ここまで3つの退場を並べましたが、実は「退場」という言葉ではくくれない、もっと小さな「もうやめたい」瞬間は、18年の間に数えきれないほどありました。塩漬け株を抱えて含み損を眺めていた時期、コロナショックで先の見えない中を守りの運用で耐えていた時期。そのたびに「こんなことをして意味があるのか」という気持ちはよぎります。
それでも今回3つに絞ったのは、この3回だけが「実際に何かを手放す、あるいは手放しかける」という具体的な行動につながった瞬間だったからです。日々の小さな迷いと、市場から本当に距離を置くかどうかの決断は、レベルが違う話だと思っています。小さな迷いは投資を続けていれば毎日のようにありますが、それに毎回付き合っていたら身が持ちません。だから「これは本当に退場を検討するレベルの出来事か」を見極める基準を、この3回の経験から少しずつ作ってきました。
今、同じ状況が来たらどうするか
もし今後また大きな下落や損失があったとして、私が目指したいのは2回目と3回目のパターンです。つまり、感情が動くこと自体は否定せず、その感情と行動の間に一呼吸置くこと。そして、離れると決めるときは、恐怖にまかせてではなく、構造やルールに基づいて自分の意思で決めること。
2009年のような受け身の退場を二度と経験しないために、生活防衛資金の確保、レバレッジを抑えた運用、資産クラスの分散という、今のポートフォリオの骨格ができています。3回の「離れたくなる瞬間」は、それぞれ嫌な記憶ではありますが、同時に今の投資スタイルを形作った材料でもあります。
もうひとつ意識しているのは、「退場する分野」を選ぶという発想です。FXという分野からは撤退しましたが、投資そのものから撤退したわけではありません。日経先物からも手数料負けを理由に撤退しましたが、こちらも同様です。投資全体を一括りにして「もうやめる」と考えると、2009年のような全面撤退になりやすい。でも「この分野、この手法だけをやめる」という粒度で考えられるようになったことで、18年間、投資そのものから完全に離れることは、あの1年半以降一度もありませんでした。
まとめ:3つの退場から
18年の投資人生で、私は3回「投資から離れたい」と感じました。2009年は気づいたら退場させられていた受け身の経験、2024年8月は衝動と向き合いながら踏みとどまった経験、そして2024年のFX撤退は計算にもとづいた能動的な決断でした。同じ「離れたくなる」でも中身はまったく違い、その違いに気づけたことが、18年間市場に残り続けられた理由のひとつだと思っています。金額の大きさで比べれば60万円のFX撤退が最大ですが、私にとって一番怖かったのは、いつも「気づいたら終わっていた」1回目の記憶です。
次に4回目の瞬間が来るとしたら、それがどのタイプになるかは分かりません。暴落なのか、別の資産クラスでの想定外なのか、今の私には予想できません。ただ、少なくとも1回目のような受け身のタイプだけは避けたい。何が起きても、自分で状況を把握し、自分の意思で次の行動を選べる状態でいること。それが今の私の、一番現実的な目標です。18年で学んだのは、退場をゼロにすることではなく、退場の質を選べるようになることでした。
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この記事を書いた人
いとこん(@itoconn_oj3)。2008年、リーマンショックの年に100万円で投資を開始。翌年にはFXの強制ロスカットで元本の6割を失い、1年半投資から離れたことも。それでも退場しなかった結果、18年で資産は約7,900万円になりました。
※本記事は個人の投資体験の記録であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いします。詳しくは免責事項をご覧ください。


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