私が投資を始めたのは2008年の秋。リーマンショックの直後です。
日経平均が1年で42%下落した、戦後最悪の年でした。世間が「株はもう終わりだ」と言っている真っ只中に、私は初めて証券口座を開き、初めて株を買いました。
先に結論を書くと、初めて買った株はすぐ塩漬けになり、翌年にはFXで強制ロスカットを食らい、投資を1年半やめました。それでも戻ってきて18年続けた結果、100万円だった資産は7,900万円になっています。
今日は、その一番最初の話です。そして当時の私が株の損失よりずっと怖かったもの──「仕事がなくなるかもしれない」という不安──の話でもあります。
2008年、市場はこうなっていた
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2008年9月15日 | リーマン・ブラザーズ破綻 |
| 9月12日→10月27日 | 日経平均 12,215円→7,163円(1ヶ月半で約4割下落) |
| 10月28日 | 一時6,994円90銭。バブル後最安値 |
| 2008年通年 | 年間下落率▲42.12%(史上最大) |
ニュースは連日、株価暴落と「派遣切り」「内定取り消し」の話題ばかり。投資を始めるタイミングとしては、常識的に考えて最悪の時期です。
きっかけは1枚の株主優待券だった
そんな時期になぜ始めたのか。きっかけは、職場の先輩にもらった1枚の株主優待券でした。
ゼンショー(すき家などを運営)の優待券です。「これ、株を持ってるだけでもらえるんだよ。貯金しててもお金は増えないぞ」──先輩のこの一言で、私は初めて「株を買う」という選択肢を知りました。
当時の私は、新車のノア(350万円)の頭金に230万円を払った直後。手元に残っていたのは約100万円です。今思えば、その状況で投資を始めるのはかなり無茶でした。
初めて買ったのは2銘柄。
- ゼンショー:450円(優待券をくれた先輩と同じ銘柄)
- ポケットカード:350円
投入したのは資産100万円のうちのごく一部。この「少額で始めた」ことが、後から振り返ると一番の幸運でした。
初心者の私は、教科書どおりに失敗した
買った直後、含み益が1万円出ました。うれしくて、すぐ売りました。
「株ってこんなに簡単に儲かるのか」と思い、優待ももらいたくなって同じ株を買い直しました。すると今度は100円以上下落。買値を大きく割り込み、売るに売れなくなりました。投資開始から数ヶ月で、早くも塩漬け株の完成です。
結局その株は、優待券を2回受け取りながら持ち続け、数年後に買値とほぼ同じ(わずかに利益が出る)価格で売却しました。損失としては数万円規模の授業料で済みましたが、「即売り→高値で買い直し→塩漬け」という初心者の典型パターンを、私は教科書どおりに全部やりました。
株の損より、雇用不安のほうがずっと怖かった
正直に書くと、当時の私にとって株価の下落は大した恐怖ではありませんでした。金額が小さかったからです。
本当に怖かったのは、自分の仕事がどうなるかわからないことでした。
リーマン後の日本は、製造業の減産、派遣切り、内定取り消しのニュースが毎日流れていました。私は正社員でしたが、「正社員だから大丈夫」と思える空気ではなかった。月々の給料が入ってくることが当たり前ではないと感じたのは、社会人になって初めてでした。
翌2009年には、FX(トラリピ)にも手を出して強制ロスカットを食らい、元本20万円が8万円になりました。そして私は投資を1年半やめました。直接の引き金はロスカットですが、根っこにあったのは「この雇用情勢で、リスクなんて取っている場合じゃない」という不安だったと思います。
この「強制ロスカットで退場した話」は、FX歴15年の最大損失は60万円|通算+106万円でも私がFXをやめた理由に詳しく書きました。
「底で買えたんでしょ」と言われるけれど
リーマン直後に始めたと言うと、「じゃあ底値で仕込めたんですね」と言われることがあります。実際は違います。前述のとおり、私が最初に投じたのは資産100万円のうちのごく一部で、日経平均7,000円台の歴史的な安値圏に、まとまった資金を入れる勇気は当時の私にはありませんでした。
「安いときに買えばいい」は、あとから言えば簡単です。でも渦中では、安いのか、まだ下がるのか、そもそも世界経済が壊れてしまったのか、何ひとつ確信が持てません。雇用すら不安な状況で株に大金を入れられる人は、少なくとも当時の私の周りにはいませんでした。安値で大胆に買えるのは、生活の土台と余剰資金と経験がそろっている人だけ。これは16年後の2024年8月の暴落で、多少なりとも冷静でいられた自分になって、ようやく分かったことです。
当時は「個人投資家が学ぶ場所」がなかった
2026年の今なら、投資を始める前にSNSで先輩投資家の失敗談をいくらでも読めます。2008年はそうではありませんでした。NISAもなく、スマホ証券もなく、情報源は証券会社のレポートかインターネットの掲示板くらい。周りに投資をしている人は、優待券をくれた先輩くらいでした。
つまり、失敗から学ぶには自分で失敗するしかなかった時代です。私の「即売り→買い直し→塩漬け」も、今なら記事を3本読めば回避できたかもしれません。この記録を書いているのは、あのとき私が読みたかったものを残しておきたいからでもあります。
1年半の離脱と、戻ってきた理由
2009年の強制ロスカットで投資をやめたあと、1年半のブランクがあります。この期間、私は投資の世界から完全に離れていました。相場もほとんど見ていません。
それでも戻ってきたのは、離れている間に「働いて貯金するだけでは、この不安は消えない」と気づいたからです。リーマン期の雇用不安は、裏を返せば「収入源が給料ひとつしかないことの怖さ」でした。だったら、給料以外の柱を少しずつでも育てるしかない。そう考えて、今度は仕組みを学んでから再開しました。
再開後は、自動売買(トラリピ)を余剰資金の範囲で回し、年15〜30万円のペースで利益を積み上げられるようになりました。一度目は勢いで入って退場し、二度目は学んでから入って続いた。この差は大きかったと思います。
18年後に振り返って思うこと
1. 結果的に、最悪の時期は最高の始め時だった
2008年秋の日経平均は7,000円台。今から見れば、歴史的な安値圏で投資家人生を始められたことになります。ただしこれは結果論です。当時「ここが底だ」なんて誰にもわかりませんでしたし、私も狙って始めたわけではありません。タイミングを当てる能力より、「たまたまいつ始めても続けられる形」で始めることのほうがずっと大事だと思います。
2. 少額で始めたから、退場せずに済んだ
もし最初に100万円全部を株に入れていたら、塩漬けとロスカットで心が折れて、二度と戻ってこなかったと思います。数万円の授業料で「初心者の失敗一式」を経験できたのは、金額が小さかったからです。
3. 一番の資産は株ではなく「毎月の給料」だった
リーマン期に痛感したのは、投資の土台は入金力、つまり働いて得る収入だということです。雇用が不安なら投資どころではない──あの時の感覚は正しかったと思いますし、だから私は今でも「生活防衛資金を分けて、余剰資金だけで投資する」を18年間守っています。
「暴落の最中に始めるのはアリですか」への答え
この記事のテーマからすると「アリ」と言いたくなるところですが、私の答えは少し違います。始めるタイミングより、始め方のほうがずっと重要です。
私は結果的に歴史的な安値圏で投資家人生を始めましたが、それでも塩漬けとロスカットを経験しました。逆に、どんな高値圏で始めたとしても、少額で・生活防衛資金を分けて・退場しない形で始めた人は、次の安値でも買い続けることができます。
暴落は「始めるチャンス」というより「少額で授業を受けられる時期」くらいに考えるのがちょうどいい、というのが経験者としての実感です。
16年後、もう一度「歴史的暴落」に遭って分かったこと
リーマンから16年後の2024年8月5日、日経平均が1日で4,451円下落する歴史的な暴落がありました。このとき私の資産は一晩で約850万円減っています。金額だけならリーマン期とは比べものにならない損失です。それでも、あのときのような恐怖はありませんでした。売買も一切していません(その日の記録)。
差は何かといえば、経験と準備だと思います。2008年の私は「株も雇用も、これからどうなるか分からない」という二重の不安の中にいました。2024年の私は、生活防衛資金を分け、資産を分散し、「暴落は数年おきに来る定期イベント」だと知っていた。同じ歴史的暴落でも、立っている土台が違えば見え方はまるで違います。その土台は、リーマン期の不安から始まった18年で少しずつ積み上げたものです。
まとめ:ひどいスタートでも、続ければ形になる
即売り、高値づかみ、塩漬け、強制ロスカット、1年半の退場。私の投資家としてのスタートは、これ以上ないくらい不格好でした。

それでも、2008年に100万円から始めた資産は、2026年6月時点で7,936万円になりました。スタートの巧拙より、退場しないこと、戻ってくること。18年やってきて言えるのは、それに尽きます。
これから投資を始める人が暴落のニュースを見て迷っているなら、「史上最悪の年に、最悪の形で始めた人間でもなんとかなった」という一つの記録として、この記事を残しておきます。
そして願わくば、今どこかで雇用不安の中にいる人に届きますように。投資より先に、生活と仕事の土台を。それでも余力があれば、痛くない金額で市場に居場所を作っておく。18年前の自分にかけたい言葉は、それくらいです。
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※本記事は個人の投資体験の記録であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資は自己責任でお願いします。詳しくは免責事項をご覧ください。


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